2011年7月17日日曜日

LEDのI-V特性モデルについて

さきに、一般のダイオードのI-V特性の式を元に、パラメータを調整して実際のLEDのI-V特性グラフにフィッティングさせることについての記事を書きましたが、先日のガジェットカフェのイベントでのゲストスピーカーの方が、LEDの構造として多段の量子井戸を持っていると説明されておりました。

量子井戸の詳細についてはお伺いできなかったのですが、ヘテロ接合を用いて1次元方向の量子井戸を作る事が出来ます。

院生時代に、輪講で担当した箇所がちょうどHEMTなどと呼ばれる、ヘテロ接合界面の量子井戸構造を用いて不純物の添加をせずにFETの特性を出すことのできるトランジスタの解説の箇所でありまして、テキストに使っていたS.M.Sze氏の半導体工学の本の当該箇所には、組成の異なるⅢ-Ⅴ族化合物半導体の接合面がFETのゲートにあたる部分になるなどというような事が書かれておりました。

接合型FETや化合物半導体系のMES-FETやHEMTとダイオードは、実は同じ様な構造となっています。

接合面を貫通するように電流を流すものがダイオード。

接合面に沿ってドレイン-ソース間電流を流し、接合面と垂直な方向にゲート電圧をかけることで空乏層厚を制御してドレイン電流を制御するものが接合型FETやMES-FET。

接合型FETやMES-FETと同様ながら、ゲート電圧によって量子井戸の深さ、すなわちエネルギー準位の多寡を制御するものがHEMTとなります。

仮に、LEDがHEMTのような量子井戸を多段構成して作られているとすれば、一般のダイオードを何本か直列接続したような構造になるはずですので、適用するべきI-V特性のモデルの式が変わってきます。

院生のとき使っていたテキストにはLEDのI-V特性の式が書かれていそうなのですが、本自体は研究室の持ち物で、かなり分厚く高価な洋書ですので、休める土曜日に国会図書館で探してみようと思います。


登場した電子デバイスの解説ページへのリンク

  • HEMT(Wikipedeia日本語版)、より詳しい解説は英語版を参照してください。
  • ダイオード(Wikipedeia日本語版)、英語版よりも日本語版の方がバンド理論などについて詳しいです。
  • 接合型FETとショットキー接合を利用したダイオードやMES-FETの図面等は、しばらくお待ちください。

2011年7月11日月曜日

LEDの動作点目算用スプレッドシート

先日、ガジェットカフェで行われたイベントの、トラ技オフ会|LED点灯回路をきちんと考える~「備えあれば憂いなし」の知恵を持ち寄るに参加しました。

実際の製作例やきめ細かな調査の発表や、ゲストの方のLEDについての深い解説があり大変楽しめました。

ちなみに、私は後述するスプレッドシートをお披露目してみました。

現在、個人的に低電圧、低消費電力システムで使用するLEDの駆動回路設計のためにSciLabを使って、DCから商用電源程度の入力周波数でのLEDの簡単な動作解析プログラムを作ってみようと考えていますが、前段階としてまずシンプルなLED駆動回路を使ったときの、LEDの動作点をグラフ上で求めるためのスプレッドシートを製作してみました。

これには、よく使われるLEDのI-V特性の式を用いていますが、IoとnはLEDのI-V特性に応じてフィッティングパラメータとして調整します。

IF=Io{exp(neVF/kT)-1}
  • IF:LEDの順方向電流
  • VF:LEDの順方向電圧
  • T:温度(K)
  • Io:LEDの飽和電流
  • n:フィッティングパラメータ
  • e:電気素量
  • k:ボルツマン係数

なお、ここで用いた例ではスタンレーの白色LEDであるUW3804Xを使用してみました。

ちなみに、発表に用いたスプレッドシートをgoogleドキュメントを用いて公開してみました。実際に発表に用いた形式のグラフを再現する方法が良く分かりませんでしたが、データはそのままの値です。

2011年7月2日土曜日

LED点灯回路の定式化(1)

電力不足の折、にわかに注目を集めているLEDですが、読んで字のごとくLight Emitting Diodeの略ですのでダイオードとしての特性を持っています。

ダイオードとしての特徴は、逆バイアス時の耐電圧が低く、VFが他の種類のダイオードに比べて著しく高い事が挙げられます。

ただ、I-V特性を見る限りでは、一般的なダイオードのI-V特性の式を利用できそうです。

点灯回路として、単純にLEDと固定抵抗を直列接続した場合、ポイントになるのは以下の3点となります。

  • LEDと抵抗に流れる電流が等しい
  • 電流はLEDに引加される電圧が支配的である
  • 抵抗に加わる電圧は電流に支配され、関係はVR=IRとなる

これらを考慮したうえで、非線型方程式を作るのが定式化への第一段階かな、などと思っています。


ダイオードのモデルは色々ありますが、学生時代に集めた資料から拾って見ようなどと考えています。

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